千田さんの『社会学評論』に掲載された論文が大きな話題になっています。
私は推理小説の様にあちこちに伏線が張られている良質な推理小説を読む様な感覚で読むことができました。それの感想文は近々noteの方へ書こうと思いますが、今回はスコットランドの多様性のための政策について、前提知識がなくて論文を読み込むことができない人たちがたくさんいることをtwitterで見かけたので、前提知識としてスコットランド、英国のここ数年の状況について、私が知っていることのみですが整理してみようと思います。
まず、英国、スコットランドのトランスイシューで一番有名なのはJKRのこちらの発言です。
Dress however you please.
— J.K. Rowling (@jk_rowling) December 19, 2019
Call yourself whatever you like.
Sleep with any consenting adult who’ll have you.
Live your best life in peace and security.
But force women out of their jobs for stating that sex is real? #IStandWithMaya #ThisIsNotADrill
これ2019年ですね...
なんでこんな発言をJKRがわざわざ言わない行けなかったかというと
#IStandWithMayaというハッシュタグがつけられてます。
マヤ・フォーステイターさんが「生物学的性は変更することはできない」とツイートしたことで
職場のthink tank Center for Global Development (CGD)から、契約更新を拒否されました。
それに対してのツイートなのです。以下BBCの記事。
この時、「生物学的性は変更することはできない」という言説自体が「トランス差別」と言われました。注目すべきは裁判官が「生物学的性は変更することができない」という言説が「民主主義社会で尊重されるには値しない」「トランスジェンダーの人たちへ苦痛を与える」などと言ってるわけです。
これをきっかけにJKRはトランスジェンダーアクティヴィストに目をつけられることになります。
女子トイレや女子の更衣室(試着室)、シャワー室が男女別に分かれているのも差別だと言われていたし、公的な機関や大手のデパートもその様に考えて、ジェンダーニュートラルな施設を増やしていました。
しかし、その流れが転機を迎えるのが、こちら
マヤさんと雇用先との裁判において、「生物学的性は変更することはできない」という言説は平等法Equalities Actに反していないとして、マヤさんの勝訴となりました。
あらゆる人たちが差別を受けない様にという法律です。
要するに大学ランキングみたいにいろんなものを得点化して、競わせていたんですね。
その項目によって官公庁や企業は多様性を目指して設備やルールを変えていきました。それぞれの団体はStonewallにお金を払って多様性を得るためにStonewallの指示に従っています。
Stonewallが決めたルールを守ることが多様性とされたので、それに従わないことは多様性を尊重しない会社、企業、学校であるとされてしまうのです。
だからマヤさんやJKRはトランスフォビアだと罵られたわけです。
ジェンダークリティカルフェミニストはそれらに非常に危機感を持っていました。GRA(Gender Recognition Act/性別認定法)の改正にStonewallが意欲的なのを知っていたからです。
Stonewallの主張はこちら
注目すべき点を引用します。
・Reforms to the Gender Recognition Act 2004, including the removal of the requirement to provide medical evidence and a process for people under 18 to access legal gender recognition.
(医学的エビデンスの提出義務の撤廃、18歳以下の法的性別認定を含む性別認定法の改正)
・A review of the Equality Act 2010 to include ‘gender identity’ rather than ‘gender reassignment’ as a protected characteristic and to remove exemptions, such as access to single-sex spaces.
(保護特性としてのジェンダー再認定ではなく、ジェンダーアイデンティティを含め、女性/男性専用スペースの様な例外を取り払う為に平等法を見直す)・Improved reporting mechanisms for transphobic hate crimes and the extension of ‘aggravated offences’ to cover transphobic hate crimes.
( トランスフォビック・ヘイトクライムの報告メカニズムの改善と、トランスフォビック・ヘイトクライムを対象とした「加重犯罪」の拡張。)
カッコ内はgurikoの拙訳
Stonewallは性別変更に医学的なエビデンス、診断書などは必要なく、ジェンダーアイデンティティを第一優先にすべきだし、それを持って平等法を見直したいし、さらにはトランスジェンダーの人へのヘイトを処罰対象にすべきだと主張しているわけです。
トランスジェンダーへのヘイトがあっては行けませんが、Stonewallの方針に従うと「生物学的な性は変更できない」という言説でさえ、「トランスフォビア」とされるわけですから、生物学や医学はどうしたらいいんでしょうかね。
また大きな問題は現行の平等法では女性/男性専用スペース、医師の診断が必要であるのにも関わらず、それらが多様性に反するものであるかの様にコンサルテーションをしていたことです。
さらに英国では2019年は労働党が大敗した年です。
原因は多くあるでしょうが、その一つは労働党とStonewallはかなり密着いていたため、トランスジェンダーMtFの人を女性として女性担当責任者にしたのです。長年労働党で活躍していた女性たちが離れていきました。それに伴い多くの女性票を失ったのです。
2019年の敗訴から控訴し、高裁でマヤさんが勝訴したのが2021年6月でした。時を同じくしてテレグラフがスコットランドで「母親」という言葉を削除したという記事を発表。多くの人たちが現状をおかしいと感じ始めました。
蜂の巣を突いた様な騒ぎになっていたので、千田さんが紹介した記事以外にもたくさんあるよ。
これも、これも、これも。
これも
リンク切れと言われていたTIMEの記事はこちら
Stonewallに平等インデックスではgendered langageを避けないと得点をもらえないので、motherという言葉は使えません。
Stonewall曰く、motherはgenderd langageなんだそうです。
これはこのキャンペーンに参加している官公庁、企業、学校は全てそうなります。ランキングが大事なので。
千田さんの論文ではスコットランド政策のみが紹介されましたが、
これはStonewallのキャンペーンに参加している全ての団体で行われてもおかしくないことです。
BBCのNolanが調査をしました。
その詳細がPotcastで公開されています。transcriptはこちら
要約でよくまとまっているのはこちら
これらの調査で分かったことは
- Stonewallは法律に遵守したコンサルを行って来なかったこと。Stonewallに都合の良いものを多様性とし、企業に強いていた
- スコットランド政府がStonewallに金を払ってロビー活動をさせた
- 国や企業はStonewallの平等インデックスで高得点取る為に従っていた
- Stonewallは男女の違いは生物学的な性の違いではなく、ジェンダーアイデンティティによる違いとした
- 同性愛を同じ生物学的な性を持つ人たちの関係ではなく同じジェンダーアイデンティティ持つ人たちの関係によるとした
- それらの考え方はNHSナショナルヘルスセンターにも影響を与えていた
- 深刻な懸念を持つ内部告発をした医療者が脅迫キャンペーンを受けて凍結された
- 公平なはずのBBC特派員がStonewallのために副業していたこと
- gender identity ideologieに批判的な人たちに対する過激な活動家からの脅迫
Stonewallの代表がgender criticalであることは反ユダヤ主義と同じだと言っています。
現在は英国ではStonewallのおかしさが明らかになってきたので、BBCや貴族院などでStonewallのキャンペーンやコンサルをやめることにしました。
キャンペーンに参加しているのはこちらで一覧になっているの参考にしてください。
上のサイトを見るとわかりますが、参加していたのに中止にしたところも出てきています。
スコットランドはそのままみたいなところが多そうですね。
大学も中止したところは少なめです。
さて、この様なStonewallの平等インデックスを遵守している様なところで、「母親」はgenderd langageであり、'parent who has given birth(産んだ人)'が多様性であり、ジェンダークリティカルであると、「反ユダヤ主義」と同じとされるのであれば「子宮を持つ人が妊娠する」というのが政治的に正しいとされるだろうし、「女性が妊娠する」というのは「差別と言われかねない」と懸念を持つことはおかしなことではないだろうと思います。
とりあえず、何だか訳のわからない反論にもならない様な屁理屈つけている人にはGoogle検索くらいちゃんとやれよなと言いたいなと思います。
書くのだけで疲れたので、推敲とかしてません。
誤字脱字もデフォです。
時系列になっていないところもあるかもしれません。
大きな間違えがあったら、twitterで教えてください。